日射量の長期トレンドは今後どうなる?(4)

前回までのブログ
日射量の長期トレンドは今後どうなる? (1)
日射量の長期トレンドは今後どうなる? (2)
日射量の長期トレンドは今後どうなる? (3)
の続きです。

太陽や日射量に関して調べていると、いろいろ気になる事が出てくるのですが、その1つは、太陽の黒点の数との関係です。

太陽の黒点の数は、11年前後の周期で増減していて、

黒点の数が多い時=太陽の活動が活発な時
黒点の数が少ない時=太陽の活動が活発でない時

ということなので、黒点の数によって、地球上の気温や日射量に影響があるかもしれないということです。

まず、太陽の黒点数の増減によって、太陽の放射パワーは増減するそうです。

SolarCycleVariations.png
SOLAR SYSTEM CENTRAL より引用

太陽の放射パワーの変動幅は、このグラフの値で見ると、
1366W/㎡に対して±0.5W/㎡位です。

黒点数が最大の時と最小の時の放射パワーの差が0.1%以下なので、仮にこの差がそのまま地上の日射量の差になるとすると、発電量の差も0.1%以下です。

とりあえずこの程度なら、気にすることはなさそうに思います。

実際のデータでも見てみました。

黒点数と日射量他1973_2017
黒点数のデータは、NASAのサイト から取得しました。
黒点数以外のデータは、気象庁のサイト から取得しました。

1973年から2017年までの45年間の東京のデータです。

赤線は全天日射量を10倍したグラフですが、黒点数の影響は全く分かりません。
差が0.1%しかないので当たり前ですが。

ということで、この程度の時間軸では、黒点数の影響は気にする必要はないと思います。

では、もっと長い時間軸の場合は、どうでしょう?

長期間の黒点数の変化と地球の気候の関係については、かなり議論されているようです。
特に、黒点数が非常に少ない状態が長期間続くと、地球の気温が低下すると言われています。

次のグラフは1600年以降の400年間の黒点数の変化です。

400YearsOfSunspotObservations.png
SOLAR SYSTEM CENTRAL より引用

1650年からの70年間は「マウンダー極小期」という黒点がほとんどない状態が続いた時期です。

次のグラフは過去1000年間の地球の温度変化ですが、マウンダー極小期は気温が低かったことを示しています。

LongTermTemperatureChange.png
SOLAR SYSTEM CENTRAL より引用

黒点数が少ない時期が続くと地球の気温が低下する理由について、日本地質学会のコラムに1つの可能性が書かれています。

「地球には海があり、海水は大気よりもはるかに多量の熱を蓄え、しかも温まりにくく冷めにくい」

つまり、
地球は大部分が海なので、地球の気温は海水温に支配されている。
黒点数が減少しても、短期間なら海水温はほとんど変化しない。
黒点数が減少した状態が長期間続くと、海水温が徐々に低下していく。
ということです。

黒点数の変化による太陽放射の変化はたかが0.1%ですが、長期間続くことで、徐々にその差が海に蓄積されて、大きな気候変化につながっていくということです。

この理論が正しいとすると、太陽活動の長期間の変化は、日射量にはあまり関係ないかもしれません。

海水温の変化と違って、日射量は変化が蓄積されることはないので、マウンダー極小期のような時期でも、地上の日射量は、太陽の放射パワーの変化に応じた日射量(0.1%以内の低下)になるだけではないでしょうか。

もう1つ、太陽の活動が低下すると、地球の雲が増えるという話があります。

「スベンスマルク効果」というらしいですが、宇宙空間から飛来する銀河宇宙線が地球の雲の形成を誘起しているという仮説です。
太陽の活動が低下すると、地球に届く太陽の磁場が弱まるため、地球に届く宇宙線の量が増えて、地球の雲が増えるということです。

この仮説が事実なら日射量に悪影響がありそうですが、過去の日射量データを見ても良く分からないので、仮に影響があってもほとんど無視できる程度ではないでしょうか。

とりあえず、この仮説はあまり気にする必要はなさそうに思います。
Skeptical Science にも、否定的な見解が書かれています。

ということで、太陽の黒点数の変化は、直接的には、あまり日射量には影響しないように思うのですが、どうでしょう?

ただし、黒点数の変化で気温が変化して、それによって気候が変化して、結果的に日射量に影響するという可能性は、あるかもしれませんが・・