実際の発電量がシミュレーションより多い理由(その1)
太陽光発電の実際の発電量がシミュレーションより多かったという話をよく聞きます。
私は今まで、
「太陽光は天気次第なので、ばらつきを考慮してシミュレーションは少し低めに出しているんだろう。」
くらいにしか考えていなかったのですが、最近、日射量についていろいろ考えるようになって、何となく理由が分かってきました。
理由はいくつか考えられますが、
1.諸々のばらつきを考慮して、シミュレーション結果を若干低めにしてある。
2.パネルの経年劣化を考慮してあるので、パネルが新しい時は発電量が良くなる。
3.シミュレーションの想定日射量より実際の日射量が多かった。
などがあると思います。
1と2は良心的なシミュレーションなら考慮されていると思いますが、せいぜい数%程度ではないでしょうか。
一番大きいのは、3の日射量だと思います。
シミレーションで使う日射量のデータは、おそらく、
NEDOの日射量データベース
を使うケースが多いと思います。
パネルメーカーが提供するシミュレーションソフトでも、中身はこのNEDOのデータが使われている場合が多いようです。
この中で、太陽光発電の月間や年間の発電量をシミュレーションする場合は、
年間月別日射量データベース(MONSOLA-11)
を使うことになります。
現在ここで用いられている日射量のデータは、1981~2009年の29年間の観測値を元にしたデータです。
「平均年データ」、「多照年データ」、「寡照年データ」の3種類がありますが、通常のシミュレーションでは「平均年データ」が使われていると思います。
この「平均年データ」は、単なる日射量の平均値ではないようですが、気象庁の過去の同じ期間の全天日射量の平均値と比べてみると、
東京のMONSOLA-11の年平均=3.32kWh/㎡
気象庁の過去データの平均値=11.965MJ=3.32kWh/㎡
福岡のMONSOLA-11の年平均=3.67kWh/㎡
気象庁の過去データの平均値=13.228MJ=3.67kWh/㎡
なので、基本的には平均値とほぼ同じと見てよさそうです。
1973年から2017年までの気象庁の全天日射量の年平均データの推移に、MONSOLA-11の対象期間(1981~2009年)の平均値を入れると、以下のようになります。
【東京の日射量の推移】
【函館の日射量の推移】
【福岡の日射量の推移】
(今年の11,12月は、今年の10月のデータを入れてあります)
これを見ると、
東京は2007年以降、ずっと日射量がシミュレーションの平均より多い状態が続いています。
特に2013年は、シミュレーションより18%も多い年でした。
今年(2017年)は、今の調子ならシミュレーションより10%位多くなりそうです。
函館は、2014年以降、シミュレーションの平均より多くなっています。
今年(2017年)は、今の調子ならシミュレーションより10%位多くなりそうです。
福岡は、2015年と16年はシミュレーションの平均とほぼ同じで、今年は去年より10%位多くなりそうです。
日射量は1990年代以降、全国的に増加傾向なのに加えて、年毎の変動が大きいので、実際の発電量がシミュレーションと異なる場合が結構あると思います。
今は日射量の増加傾向の恩恵で、発電量がシミュレーションより多くなる傾向ですが、今後はどうでしょう?
引き続き日射量を気にしていこうと思います。