日射量の長期トレンドは今後どうなる?(7)・・・秋の日射量は低下傾向か?

以前のブログ
日射量の長期トレンドは今後どうなる?(6)・・・日射量と湿度の関係
の続編です。

ここ数年、東京では湿度が急上昇している一方、8~10月の日射量が低下するといった現象が起きています。

日射量と湿度の推移東京8月2018
日射量と湿度の推移東京9月2018
日射量と湿度の推移東京10月2018

この現象について、他の地域についても見てみました。

東京以外では、8月はあまり明確な傾向が見えないので、各地の9月と10月の日射量と湿度の推移をグラフにしました。

<大阪>
日射量と湿度の推移大阪9月2018
日射量と湿度の推移大阪10月2018

<福岡>
日射量と湿度の推移福岡9月2018
日射量と湿度の推移福岡10月2018

<鹿児島>
日射量と湿度の推移鹿児島9月2018
日射量と湿度の推移鹿児島10月2018

<函館>
日射量と湿度の推移函館9月2018
日射量と湿度の推移函館10月2018

函館は日射量が低下しているような傾向は見られないと思いますが、それ以外の地域は、少し微妙な所もありますが、ここ数年、湿度の上昇傾向と共に、日射量が低下傾向になっているような感じがします。
あと1、2年様子を見れば、傾向がより明確になるかもしれません。

この現象に関係しそうなニュースが2015年にありました。

日本近海の海面水温が関東の高温多湿な夏に寄与していることを発見

首都大学東京・理化学研究所・北海道大学・埼玉県環境科学国際センター・海洋研究開発機構からなる研究チームは、過去31 年分のデータに基づいた領域気候モデルを用いた数値シミュレーションにより、関東の夏の気温に対する海面水温の影響を評価した結果、日本近海の海面水温の変化が関東地方の気温変動に影響を及ぼしていることを明らかにしました。
具体的には、関東南沖を流れる黒潮周辺の年々の海面水温の変動が、関東地方の気温変動を増幅しており、約3 割の気温変動は海面水温の影響によって説明できることが分かりました。
また、長期的な海面水温変化が長期的な気温変化に部分的に寄与していると考えられます。
さらに、日本近海の海水の蒸発量の増加が関東地方の水蒸気量の増加を引き起こし、地域スケールの温室効果を強化している可能性も示唆されました。

つまり、

・日本近海の海面水温の変化が関東地方の気温変動を増幅
・海水の蒸発量の増加が関東地方の水蒸気量を増加

ということがシミュレーションで明らかになったということです。

東京の水蒸気量は年々増加傾向ですが、やはりこれは海面水温の上昇の影響が大きいようです。

水蒸気圧の推移東京3_7月2018
水蒸気圧の推移東京8_10月2018

関東の南の海域平均海面水温2017
海面水温の長期変化傾向(日本近海)のデータ

海面水温が上昇して、水蒸気の量が増えて、湿度が上昇する。
ということが、東京を含めて各地で起こっている可能性があります。

そうすると、
東京の湿度は1年中上昇傾向なのに対して、
日射量は8~10月は低下傾向、他の月は増加傾向
なのはなぜか?

という疑問が出てきますが、おそらくこれは雨の降り方が関係しているような気がします。

最近、各地で豪雨が増えていますが、海で大量に発生した水蒸気が上空で雲になっても、短時間の豪雨で降ってしまうと、月間の日射量の低下にはならない可能性があります。
一方、秋になると気温が低下するので、豪雨にはならずに雲や雨が長時間持続して、日射量が低下しそうです。

この考え方が正しければ、水蒸気の量が年々増加している傾向を考えると、秋の日射量の低下傾向は今後も続く可能性があると思います。

さらに気になるのは、東京の8~10月の気温が最近低下傾向だということです。

気温の推移東京3_7月2018
気温の推移東京8_10月2018

気温が下がると飽和水蒸気量が減るので、雲が増える方向になります。
東京の秋の日射量の急低下は、この気温低下も一因になっているかもしれません。

最近の秋の日射量の低下傾向が一時的な現象なのか長期間続く現象なのかは、現時点で断定することはできませんが、今後の日射量や発電量を予測する時は、少し気にしておいた方がいいかもしれません。