再エネ出力制御は不透明

この手の不具合やミスは、他の電力会社でもあるのではないでしょうか。

日経メガソーラービジネス(2024/3/13)
東北電NW、500カ所の太陽光に「誤制御」も、公表せず

再生可能エネルギー発電所に対する出力制御(出力抑制)の運用で、東北電力ネットワーク(東北電NW)が2023年9月に誤って太陽光発電所の出力を抑制していたことが明らかになった。9月24日(日曜日)の午前8時から午後4時の8時間、本来は出力制御の必要がない約500サイト(合計出力27.9MW)が出力を抑制されて、売電できなかった。


 
今回、誤制御が起きたのは、スケジュール書き換え方式を採用しているサイトになる。

東北電NWによると、9月7日に出力制御スケジュールの情報を管理する同社サーバーで20分間、エンジニアが作業を行った。その間にサーバーにアクセスした太陽光サイトのPCSに対しサーバーから不適切なエラーコードが発信されたことで、一部サイトのPCSでリトライ(再度サーバーにアクセスする)機能が働かなくなってしまい、その結果、9月7日以降、スケジュールが更新されなかったという。

9月24日は日曜日で管内全体の需要が少ないと予想されることから、9月7日以前の制御スケジュールでは午前8時から午後4時の8時間に出力を抑制することになっていたが、7日以降、最新の天気予報などを加味した需給バランスの予測により再エネ出力を抑制する必要がないと判断され、更新スケジュールでは制御日ではなくなっていた。しかし、7日にリトライ機能が失われていた約500サイトのPCSは古いスケジュールのままだったため、24日当日に8時間、出力が抑制された。

再エネに対する出力制御の運用では、2023年4月にも中部電力パワーグリッド(中部電PG)が、4月16日7時30分から8時00分の30分間、誤って本来必要ない出力制御を実施していたと発表した。誤制御によって出力を抑制された発電所は、オンラインによるリアルタイム制御の太陽光発電所・314カ所、合計出力は約110MWだった。

中部電PGによる誤制御の原因は、再エネ出力の抑制量を算出する中央給電指令所のシステムで運用にミスがあった。揚水発電に使う動力を手動で更新していたため、作業員の手違いで最新の揚水動力が反映されず、エリア需要が最新予測より小さく見積もられ、本来抑制する必要がない再エネ設備に対して制御指示が出されてしまったという。

再エネに対する出力制御は、発電事業者にとって直接的な損失になるため、その運用に関しては、高い公平性と透明性が求められる。東北電NWによる誤制御の規模(500件・27.9MW)は、中部電PGによる誤制御の規模(314件・110MW)と比べて、件数では大きく上回っている。誤制御された出力規模は小さくなっているが、東北電NWの場合、正午前後の8時間と長時間にわたるため、早朝の30分だった中部電PGに比べて、抑制された発電量は多かった可能性もある。透明性の観点から、企業姿勢が問われそうだ。

この記事からは東北電力の「誤制御」の本当の原因は良く分かりませんが、この手の不具合やミスは、他の電力会社でも大なり小なり起きていても不思議ではないと思います。

電力会社の中で出力制御の不具合やミスが起きていても、また出力制御が恣意的に行われていたとしても、公表されなければ、外部には分かりません。

現在の電力会社まかせの再エネ出力制御は、発電所が発電した電力を電力会社が全量買い取ることになっている「固定価格買取制度」を、骨抜きにする制度とも言えるのではないでしょうか。

 
また、電力会社にとっては、出力制御を減らす努力をしない方が、日中の卸電力市場価格が下がって、メリットになります。
卸電力市場価格が下がると、再エネ賦課金単価を決める時の「回避可能費用等」も下がるからです。

経済産業省(2024/3/19)
2024年度の賦課金単価

2024年度の賦課金単価は、再エネの導入状況や卸電力市場価格等を踏まえ、1kWh当たり3.49円となりました。目安として一ヶ月の電力使用量が400kWhの需要家モデルの負担額を見ると、月額1,396円、年額16,752円となります。

「回避可能費用等」は、2023年度はウクライナの影響で前年の2.5倍になりましたが、2024年度は前年の6割に下がりました。

「回避可能費用等」が下がると、賦課金単価が上がるので、電力会社の収入が増えることになります。


電力広域的運営推進機関

回避可能費用は、かつてボッタクリ論争が起きて、計算方法が見直された経緯があります。

東洋経済(2013/12/17)
年間1000億円も電気料金へ不当に上乗せか 再生可能エネルギー賦課金を巡る不可解

東京大学社会科学研究所の松村敏弘教授は、こうした問題点をFIT導入前から再三指摘してきた。今年9月の経産省総合資源エネルギー調査会基本政策分科会でも、「現在の回避可能原価(費用)は、どう考えても調整しないはずの電源も含めた全電源の可変費用(燃料費などの運転費用)で計算されており、明らかに過小(賦課金は過大)」と述べ、将来、再エネ普及とともに賦課金総額が拡大するにつれ「相当大きな問題になる」と懸念を示した。

河野太郎公式サイト(2014/3/13)
ボッタクリをなくせ!

おかしな回避可能費用を定めて、再エネ賦課金を人為的に高く設定したのは『ボッタクリ』以外のなにものでもない。
電力会社と経産省に騙されてはいけない。

その後、回避可能費用は卸電力市場価格を元に決めることになりましたが、本当に公平・公正で妥当な方法になったのか、一般国民にはよく分かりません。

 
いずれにせよ、電力会社にとっては、再エネの出力制御を減らす努力をせず、今の不透明な状況を続けた方が、都合がいいのでしょう。

再エネ出力制御は、今後も増える一方になりそうです・・