スクリュー杭の耐用年数に注意

大金を投資して作った太陽光発電所は、1年でも長く使いたいと思う人は多いと思います。
太陽光発電所の機材や部材の耐用年数(税法上でなく実使用上の年数)は、パワコンは10~20年程度、ソーラーパネルは20~30年程度と言われたりしますが、架台や基礎に関してはあまり聞くことがありません。

架台や基礎は、何となくパワコンやパネルより丈夫で長持ちしそう。
というイメージがあるのかもしれませんが、実際はどうなのでしょう?

ちょっと気になったので、スクリュー杭について調べてみました。

野立ての太陽光発電所の架台の基礎でよく使われているスクリュー杭は、鉄の材料に溶融亜鉛メッキをしたものが一般的です。
したがって、物理的な何か特別な力が加わるようなことがなければ、スクリュー杭の劣化の要因は、腐食によるものが中心になると思います。

販売中のスクリュー杭の仕様をいくつか見てみると、亜鉛メッキはJIS規格のHDZ55に準拠したものが多いようです。

JISH8641種類及び記号
JIS規格 JIS H8641より

JISH8641付着量及び硫酸銅試験回数
JIS規格 JIS H8641より

HDZ55の亜鉛メッキの付着量は、550g/㎡以上となっています。
亜鉛メッキも経年で徐々に腐食によって減っていくので、新品の時に550g/㎡のメッキが何年でなくなるかで、杭の耐用年数を予測することができます。

日本鉱業協会の「亜鉛メッキ」のページ
溶融亜鉛めっきの耐食性 の資料に、
様々な環境での溶融亜鉛めっきの腐食に関するデータが出ています。

大気中の亜鉛の腐食速度はこのようになっています。

溶融亜鉛メッキ大気中における耐食性

表の「耐用年数」は、550g/㎡の亜鉛メッキの90%が消耗するまでの期間です。
大気中なので、スクリュー杭の地上に出ている部分が当てはまると思いますが、これだけ持てば十分だと思います。

ただし、海岸地域については、風などの影響でかなり変わってくるようです。
次の表は、海岸からの距離による亜鉛メッキの腐食減量です。

溶融亜鉛メッキ海岸からの距離による腐食減量

海岸からの距離が70メートルの場合は、
550÷29.2=18.8年
で亜鉛メッキがなくなる計算になります。
海岸が近い場合は要注意だと思います。

次は土壌中の亜鉛メッキの腐食速度です。
スクリュー杭は大部分が土の中にあるので、この土壌中の腐食速度が重要になってくると思います。

土壌中の腐食速度は、土の性質によって異なるようです。

溶融亜鉛メッキ土性の区分

溶融亜鉛メッキ土壌中の腐食速度

垂直埋没の場合は、16~37g/㎡/年となっています。
550÷37=14.8年
550÷16=34.3年
土の種類によって差がありますが、14~34年程度で亜鉛メッキがなくなることになります。

次は米国のデータだそうですが、農用地のように排水性の良い土地や湿った土壌では、腐食速度がかなり早くなることが示されています。

溶融亜鉛メッキ米国各種土壌中の腐食

「有機質還元性(堆肥)」の土壌は、堆肥で耕したような土壌だと思うのですが、110g/㎡/年という数字になっています。
これだと亜鉛メッキが5年でなくなってしまいます。
普通の野立て太陽光では、わざわざ堆肥を混ぜることはないと思いますが、ソーラーシェアリングで土を耕すような場合は要注意かもしれません。

亜鉛メッキの腐食の程度は、土壌の抵抗率で大体分かるようです。

溶融亜鉛メッキ土壌の抵抗率と腐食程度

水分が多い土壌は抵抗率が低くなりそうですが、そのような土地は腐食が早くなるので注意した方がよさそうです。

スクリュー杭の耐用年数は、環境によって大きく変わってくるようなので一概に語るのは難しいですが、意外に持たない場合もありそうです。
太陽光発電所を30年、40年と維持運用する場合は、パネルやパワコンだけでなく、杭の交換も考慮しておく必要があるかもしれません。