スマートメーターを導入する裏の目的

企業が設備投資を行う場合は、表の目的とは別に、裏の目的が存在することはよくある事だと思います。

一般的に、「表の目的」は企業も宣伝を行うなど積極的にアピールしますが、「裏の目的」はあまり表に出さないことが多いです。
例えば、鉄道会社が自動改札を導入した時は、人員の削減や改札の混雑緩和といった「表の目的」は大々的に宣伝されましたが、それとは別にあまり表には出さない「裏の目的」がありました。
自動改札を導入した「裏の目的」は、ズバリ「キセル対策」です。
定期券を2枚使うようなキセル乗車によって、鉄道会社には相当な損害が発生していたようですが、自動改札の導入で損害が激減したという話もあったようです。

スマートメーターの導入に関しては、
東京電力のスマートメーターの説明 を見ると、
 ・電気の使用量を30分ごとに計測することで、電気の見える化や効果的な省エネができ、多様な料金プランが可能になる
 ・通信機能によって遠隔での自動検針、アンペア変更、停電復旧の迅速化が可能になる
といったメリットが書かれていますが、これらは当然、「表の目的」です。

スマートメーターを導入する「裏の目的」はいくつかあると思いますが、代表的なものに「盗電対策」があります。
「盗電」とは、電気をタダ取りしたり、電気代を不当に安くする行為などですが、主な手法は以下のようなものがあるようです。

盗電の手法
(引用)スマートメータを用いた盗電検知システムの開発

1.電力量計への細工
 アナログ式の電力量計において、異物や磁石などによって円盤の回転を遅くし、電力量が少なくなるようにする。
2.計測員の買収
 電力量計の計測員に金銭等を与えることで、使用電力量を少なく報告させる。
3.直接盗電
 給電線に自前の電線を接続したり、電力量計にバイパス線を接続する。

このような「盗電」には、電力会社は昔から頭を悩ませていたそうですが、スマートメーターを導入することによって、かなり防ぐことができるようです。

スマートメーターは完全に電子化されているため、アナログ式のように計測値を少なくさせるようなことは困難です。
また、スマートメーターは常時電力会社と通信しているため、何か異常があるとすぐに分かるようになっています。
ルネサスのプレスリリース
世界最小の消費電力を実現したスマートメータ用マイコン「RL78/I1B」を発売
には、
バックアップバッテリによって停電時も周辺機能の動作を保証。
と書いてあります。
スマートメーターは、停電の時でもバッテリーで動作して、異常を検出できるようになっていると思われます。

スマートメーターは遠隔で自動検針するので、計測員を買収することもできません。

「直接盗電」に対しては、スマートメーターを導入しただけでは防ぐことは難しいですが、対策方法はあるようです。
スマートメータを用いた盗電検知システムの開発
には、供給電力と消費電力を比較する方法が出ています。

盗電検知の手法
 
この方法が現在どこまで実用化されているかは分かりませんが、スマートメーターを導入することによって、「直接盗電」を検知することはできそうです。

また、これも盗電の一種かもしれませんが、電気代を払わない需要家に対して、スマートメーターなら遠隔から電気を止めることが簡単にできるようです。

電力会社がスマートメーターの導入に積極的なのは、このような電力会社にとってのメリットが大きいのも理由の1つだと思います。

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