テスラの大規模蓄電池がすごい成果を上げているらしい

電気自動車の生産では苦戦しているテスラですが、昨年オーストラリアに設置した大規模蓄電池がすごい成果を上げているようです。

tesla大規模蓄電池
Tesla completes world’s largest li-ion battery system in Australia

テスラの大規模蓄電池が系統サービスのコストを90%削減
Tesla’s giant battery in Australia reduced grid service cost by 90%

昨年、南オーストラリア州に導入したテスラの大規模蓄電池によって、運用を開始してから最初の4カ月で、系統サービス(周波数調整、アンシラリーサービス)のコストを90%削減することができたそうです。

この大規模蓄電池は、もともと系統の安定化のために導入したものですが、安定化するだけでなく、コストの大幅削減ができてしまったということです。

もう少し具体的な内容がこの記事に書かれています。
Inside the Tesla big battery: How it made money and cut prices

簡単に言うと、
電気の料金が安い時間に購入して充電し、料金が高い時間に放電して売ることで、利ざやを稼いだ。
ということのようです。

tesla大規模蓄電池充放電カーブ
RENEW ECONOMY

図のように、夜間の料金が安い時間に蓄電池を負荷(Load)にして充電(買電)し、午後の料金が高い時間に蓄電池から放電(Generation)して売電します。

夜間の料金は1MWh当たり100豪ドル位ですが、午後のピーク時は400豪ドル近くになっています。
午後の料金が上昇するタイミングに合わせて、大量に放電(売電)しているのが分かります。

充電時と放電時の料金カーブは日々変化しますが、平均すると差額が91豪ドル/MWhだそうです。

tesla大規模蓄電池充放電差
RENEW ECONOMY

少し計算してみます。

この大規模蓄電池の蓄電容量は129MWhなので、
夜充電(買電)した電気を午後放電(売電)すると、1日当り、
91×129=11739豪ドル
の儲けが出ることになります。
1豪ドル=80円とすると、
11739×80=939120円
です。

この大規模蓄電池を導入したことで、1日当り約94万円の儲けが出るようになったことになります。
1カ月で約2800万円、1年で約3億4300万円です。

一方、投資額に対しては、
テスラが世界最大の蓄電システムを稼働
によると、この蓄電システムの建設費が5000万豪ドル(約40億円)なので、
単純に1年の儲けで割ると、
40÷3.43=11.66
つまり、12年以内に元が取れる計算になります。

この蓄電池の寿命のスペックは分からないのですが、仮に充放電サイクル寿命が5000サイクルだとすると、
1日1サイクルなので、
5000÷365=13.7年です。
蓄電池の劣化を全く考えなければ、元を取った後も2年位使えることになります。
数億円の儲けが手元に残りそうです。

この大規模蓄電池の話が持ち上がった当初は、系統安定化の効果を疑問視するなど、導入に反対する意見も多かったようですが、今では全く情勢が違うようです。
従来の火力発電等による系統安定化では時間とコストが必要でしたが、蓄電池の場合は需要や価格の変化に瞬時に対応することができるので、系統の品質向上に加えて、利ざやによって儲けることができるようになり、投資家の態度も変わってきたようです。
このテスラのシステムは、ソフトウェア制御で電気の売買を0.2秒でできるそうです。
どうやら、電気も投機の対象になってしまったようです。

ちなみに、この蓄電池のkWh単価は、
40億円÷12.9万kWh=3.1万円/kWh
です。

今まで蓄電池は投資にならないと言われてきましたが、この位の値段になってくると、検討する価値があるかもしれません。
蓄電池が投資として成り立つ物になれば、爆発的に普及が進む可能性があります。
そして、もしそうなったら、需給バランスの問題も、送電線の容量問題も、かなり解決できそうな気がします。