日射量の長期トレンドは今後どうなる?(5)

東京の湿度が急上昇している。気候に異変か?<続き>
で、東京の水蒸気量がここ数年、急上昇していることを書いたのですが、水蒸気が増えると、雲が増えて日射量に影響があるかもしれません。

湿度他1931_2017_tokyo2

 
大気中の水蒸気量とかなり関係がありそうなものは、「海」ではないかと思います。
そこで、海水の温度に関するデータを探してみると、怪しそうなデータがありました。

太平洋十年規模振動(PDO)指数の変動 です。

PDO指数の推移1901_2016
 
これは、北太平洋の主要な海面水温の変動を指数にしたもので、10年~数10年規模で変動しているものです。
太平洋の海面水温に見られる十年~数十年規模の変動

このページ にも記載されていますが、

1920年代後半から1940年代前半
1970年代末から2000年頃
2014年以降
が正の値

1940年代後半から1970年代
2000年頃から2010年代前半
が負の値

となっています。

そこで、これらの時期を東京の蒸気圧のデータに当てはめてみました。

蒸気圧1931_2017_tokyo2
 
すると、

PDOが正の値の時期は、水蒸気量が増加傾向
PDOが負の値の時期は、水蒸気量が減少傾向

になっています。
タイミングがほぼ一致しています。
これらは関連がありそうな気がします。

たまたま東京だけかもしれませんので、福岡も見てみました。

蒸気圧1931_2017_fukuoka2
 
福岡も、ほぼ一致しています。

詳しい理屈はよく分からないのですが、日本の水蒸気量と北太平洋の海面水温に何らかの関連がありそうな感じがします。

次のグラフは、東京の蒸気圧と雲量の推移を比較したものです。

蒸気圧雲量1931_2017_tokyo
 
一部違うところもありますが、ほぼ傾向は同じだと思います。

さらに、雲量と日射量を比較したのが次のグラフです。

雲量日射量1973_2017_tokyo
 
日射量は、1990年頃から2013年まで増加しています。
これは、大気汚染の改善によるところが大きいと思われます。
日射量の長期トレンドは今後どうなる?(2)

ところが、2013年をピークに、その後日射量が減少しています。
2014年から、雲量の増加に合わせて、日射量が減少しています。
2014年は、「太平洋十年規模振動(PDO)」が負から正に変わった時期と一致します。
このころから大気汚染の改善効果よりも、雲の影響の方が大きくなってきたのかもしれません。

今後、「太平洋十年規模振動(PDO)」の影響で日射量が変動すると仮定すると、ちょっと気になることがあります。

PDO指数は、一度正負が変わると、10年程度は同じ状態が続いています。
現在の正の状態は2014年に始まったようなので、あと数年は続く可能性があります。
つまり、今後数年間は、雲が多く、日射量の減少傾向が続く可能性があります。

とは言え、今年(2017年)は、今の調子でいけば、去年より雲量が少なく、日射量は増えそうです。
PDO指数が正の値でも、一方的に雲が増え続けるわけではなさそうです。

いずれにせよ、今後は、「太平洋十年規模振動」も気にしようと思います。