太陽光発電設備の廃棄費用 「建設費の5%」の根拠は何だ?

2033年頃から急増すると言われている太陽光発電設備の廃棄に関して、資源エネ庁で議論が行われているようですが、いろいろ気になることがあります。

資源エネ庁廃棄対策議論資料20181121
(引用元:資源エネルギー庁 資料

資料の中で何度も出てきますが、太陽光発電設備の廃棄等費用の
「資本費(建設費)の5%」
という金額の根拠については以前から気になっていました。

廃棄費用はFITの定期報告でも記入が必須になっていますが、ほとんどの場合、この建設費の5%の金額にしていると思われます。
実際問題、今から20年以上先の話で他に出しようがないと思います。

(参考)以前のブログ
低圧太陽光(10kW以上)の発電設備の廃棄費用は「建設費の5%」?

まだ先のことなので、とりあえず、これ以上は気にしないことにしていたのですが、廃棄費用を「強制徴収」するような議論が本格化してくるとなると、気にしない訳にはいきません。

「太陽光発電設備の廃棄費用は建設費の5%」
は、資源エネ庁が作成したと思われる
各電源の諸元一覧
に記載されています。

各電源の緒元一覧太陽光廃棄費用

ここに書かれている
Projected Costs of Generating Electricity 2010 Edition
を見ると、
43ページの
Decommissioning and residual value
の所に、
Nuclear energy 15% of construction costs
All other technologies 5% of construction costs
(原発は建設費の15%、その他は建設費の5%)
と書かれていますが、この数字の根拠は分かりません。
報告書を隅から隅まで見ればどこかにあるのでしょうか?
もしあったら誰か教えてください。

この書き方だと、原発以外の発電所の廃棄費用は火力も水力も太陽光も、立地や設備の状況などに関係なく、全て建設費の5%ということになります。
報告書の文章にも、
「廃棄費用が提示されていればその値を使って、提示されてない場合はこの値(建設費の5%)をデフォルト値として使う」
と書かれています。
どうやら、「建設費の5%」という金額は、あまり根拠のない、どんぶり勘定的なざっくりとした金額と思われます。
資源エネ庁は、そんな根拠不明な金額を前提に、FITの買取価格を決めたり、廃棄費用を強制徴収する議論をしているということでしょうか。

そもそも、廃棄ありき、積立ありき、で議論を進めようとしているところが気になります。
資源エネ庁と環境省は縦割り行政で交流がないのでしょうか。

環境省の
使用済再生可能エネルギー設備関連
のページにある
太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第一版)
には、次のように書かれています。

太陽光発電設備リサイクル等の推進ガイドライン

優先順位は、
1.リデュース
2.リユース
3.リサイクル
です。

この優先順位を前提に、議論を進めていくべきだと思います。
リデュースとリユースの基本は、既存のソーラーパネルや架台などをいかに長く使うかだと思いますが、これは廃棄コストの削減と同時に環境にも良さそうなので、NEDOなどでももっと積極的に取り組んでいいテーマだと思います。

発電所によっても、パネルの定格出力の50%まで劣化しても採算が合うからそこまで交換しないとか、劣化の状況を見て一部のパネルだけ交換するとか、いろいろな考え方があると思います。
土地が定期借地でFIT終了後に更地にする場合は、設備を廃棄するより、リユース用に売却できる方がいいはずです。

リユースできないものはリサイクルになりますが、今なら十分時間があるので、低コストのリサイクル方法を開発すべきだと思います。
今後生産されるパネルについては、パネルメーカーにリサイクルしやすい設計をしてもらうことも必要だと思います。

廃棄費用を徴収するにしても、公平性と納得性のある方法と金額にすべきです。
まずは、2030年以降、リサイクルや廃棄の状況はどうなるのか、それに必要な費用はどうなるのか、といったところから始める必要があるのではないでしょうか。

間違っても、徴収するための天下り団体を作って、巨額な管理コストがかかるような事にはならないことを願います。